11月27日(金)、福島市において2020年度「ふくしま土の会」研修会が開催された。「ふくしま土の会」は「全国土の会」の支部組織(地域土の会)として、2020年6月に立ち上げられた23番目の地域土の会。
なお、平成5年前後に福島県野菜園芸技術研究会(福野研)のメンバーを中心に「全国土の会福島県支部」が立ち上がったが、しっかりとした事務局体制を構築できなかったため、10年程で休止状態となった。
平成23年3月11日の東日本大震災からもうすぐ10年を経過しようとしているが、福島県では浜通りの沿岸部で大津波、全域で福島第一原子力発電所事故に伴う放射能被害を受けた。その2ヶ月後には、「東京農業大学東日本支援プロジェクト」が結成され、相馬市・南相馬市・伊達市を中心に津波被災水田と放射能汚染農地での作付再開のための活動が開始された。そのプロジェクトでは全国土の会会長の後藤逸男教授(現在、名誉教授)が土壌肥料グループのリーダーとして、被災地域の農家・JA・行政と連携した復興活動を続けてきた。
そのような経緯の中で、2年程前から福島県内での支部(地域土の会)再立ち上げの機運が高まり、本年6月23日にJAふくしま未来を事務局とする「ふくしま土の会」立ち上がった。その後、9月に第1回研修会の開催が計画されたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期され、11月27日(金)の開催となった。
13:30に福島市飯坂町「摺上亭大鳥」の駐車場に参加者が集合した。その後、車に分乗して日東粉化工業(株)の飯坂鉱山に向かった。飯坂鉱山はクリノプチロライト系天然ゼオライトを露天掘りしている世界でも有数のゼオライト鉱山である。集合場所から10分ほどで到着後に、事務局であるJAふくしま未来営農部農業振興課の佐藤邦彦課長の司会で開会セレモニーが行われた。先ずは、「ふくしま土の会」斉藤保行会長から開会の挨拶があり、続いて「全国土の会」の後藤逸男会長が次のように述べた。
★全国土の会 後藤逸男 会長の挨拶★
新型コロナウイルス感染拡大で、世の中が一変してしまった中を「ふくしま土の会」第一回研修会に参加頂き、ありがとうございます。
「全国土の会」とは、平成元年に立ち上げました農家のための土と肥料の研究会です。今年で32年目を迎えます。「全国土の会」には現在23の支部組織がありまして、「ふくしま土の会」もそのひとつです。
「ふくしま土の会」設立につきましては、斉藤会長・八巻顧問をはじめとして結集頂いた会員の皆様にお礼申し上げます。また、「ふくしま土の会」の事務局をお引き受け頂きましたJAふくしま未来の数又組合長を始め、事務局を担当頂く佐藤さん・紺野さんには今回の研修会開催にご尽力頂きました。ありがとうございました。
さらに、今回の研修会では福島大学の二甁先生に講演を頂くことになりました。二甁先生は、今最も注目されている土壌肥料研究者のお一人です。ご講演を楽しみにしています。
また、JA全農福島農業技術センターの森田センター長には今回の土壌診断分析結果の解説をお願い致しています。お二人の先生方、よろしくお願い致します。
さて、研修の第一として世界一の天然ゼオライト鉱山におじゃましています。ゼオライトは「健康な土づくり」の助っ人として、たいへん役立つ土壌改良資材です。単にCECを大きくするだけの資材ではありません。機会がありましたらお話ししますが、ゼオライトはすごい威力とすばらしい魅力を持つ土壌改良資材です。そのようなゼオライト鉱山ががこの福島にあることを、本日はじっくりご覧頂きたいと思います。
本日は半日の研修会ですが、よろしくお願い致します。 ★挨拶終了
開会セレモニー終了後、ゼオライトを採掘する切り羽に徒歩で出発した。飯坂鉱山は山全体がゼオライトからなる鉱山で頂上から露天掘りをしている。かなり急な山道を約15分かけて切り羽面に到着した。ふだんあまり歩かない参加者にとってはきつい登りのようであった。ゼオライト採掘現場は野球場を思わせるような広い平地でその一角に切り羽があった。参加者全員が登り切ったところで、日東粉化工業(株)から飯坂鉱山の説明が行われた。3.11の原発事故後には、水稲や畑作物への放射性セシウム吸収抑制資材として、この飯坂鉱山からも大量のゼオライトが供給されて福島県下の農地に施用された。
飯坂鉱山見学後には、現地研修(その2)として伊達市梁川粟野の八巻正好農園に移動し、畑の視察とJA全農福島農業技術センターの森田雅之センター長の指導で、土壌診断調査のデモンストレーションが行われた。八巻正好農園の概況は別紙(本記事最終行よりダウンロード)のとおりである。なお、八巻氏は「ふくしま土の会」の顧問でもある。
その後、会場をJAふくしま未来の梁川共選場2階の会議室で、福島大学食農学類の二瓶直登準教授により「作物におけるアミノ酸の吸収について」と題する講演が行われた。
講演内容は、(1)作物への窒素吸収形態について、(2)アミノ酸で植物は育つのか!、(3)アミノ酸は本当に吸収されている?、(4)アミノ酸を吸収るってどういうこと?、(5)有機態窒素の可能性、とたいへん示唆に富む講演であった。講演後、参加者から多くの質問が寄せられた。
続いて、森田雅之センター長から研修会に先立って行われた会員の土壌診断結果の解説が行われた。なお、今回の土壌診断分析はJA全農福島農業技術センターで行われた。時間の都合で、個々の会員のデータ解析は行われなかったが、今後は「ふらの土の会」で行われているような「土壌診断裁判」が開廷されることを期待したい。
午後5時、斉藤保行会長の閉会の辞を最後に、「ふくしま土の会」第1回研修会を盛会裡に閉会した。参加者26名であった。新型コロナウイルス感染対策のため、懇親会は開催されなかった。