2017年度のはじめに当たって
「全国土の会」とは、農家のための土と肥料の研究会です。その目的は農業者が土壌診断結果に基づいた土壌改良・施肥管理を行うことで、貴重な肥料資源の節約や有機質資源の有効利用を図り、農業生産経費ばかりではなく環境負荷軽減をも図ります。また、高品質農産物を生産し、環境及び農業経営にも、やさしい農業を実践することです。
1989年(平成元年)10月に立ち上げた「全国土の会」の事務局を、2015年3月までは私が40年間在職した東京農業大学土壌学研究室に置いていましたが、定年退職に伴いその存続が困難となりました。そこで、2015年4月1日に「全国土の会」の事務局を主な業務とする大学発ベンチャー企業「東京農大発株式会社全国土の会」を、学校法人東京農業大学の支援の下に世田谷キャンパス内に起業しました。
このように、「全国土の会」と「東京農大発(株)全国土の会」とは別組織です。ただし、「全国土の会」会長が私の表の顔、「東京農大発(株)全国土の会」代表取締役が裏の顔で、とどのつまりは表裏一体です。
このところ、農業界では政府主導による農業改革が進められ、肥料の価格低減、銘柄の集約化などが進められようとしています。農家にとって肥料代は安いに越したことはありませんが、安ければよいという物ではありません。園芸土壌では、リン酸やカリの過剰に伴う「メタボ化」の一方、水田土壌では、堆肥やケイ酸資材の施用削減による地力低下が進んでいます。このように、わが国の農地土壌の肥沃度は大きく二分化していますが、共通点は「土の不健康化」です。
これからの土づくりとは、土を健康にすることでなくてはいけません。そのためには、土壌診断に基づいた施肥管理が基本となります。メタボ化した園芸土壌には、窒素に比べてリン酸やカリ含有量の少ないV型あるいはL型肥料が合理的ですが、現状では横並びあるいは山型肥料が主体です。今後の銘柄集約化では、栽培品目別肥料ではなく、土壌養分に合わせた肥料銘柄への集約化を期待します。
次に、今年度の全国大会ですが、11月1日(水)・2日(木)に高知市で「第29回全国土の会四国大会」を開催致します。その他には、今年も各支部の主催で開催される現地土壌診断調査や研修会を通して、「全国土の会」会員の皆さんに土壌肥料に関する最新情報を提供したいと考えています。
「全国土の会」会員の皆様方には、今後とも本会活動への積極的な参加と、事務局である「東京農大発(株)全国土の会」にご支援・ご協力を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。これまでは、農家あるいは農業に関連する皆様が中心の研究会でしたが、今後は家庭園芸やガーデニングに興味ある方など「土」に係わる全ての皆様にも参加頂き、活動の輪を拡げていく所存です。よろしく、ご協力をお願い致します。
2017年4月
全国土の会 会長
東京農業大学 名誉教授
東京農大発(株)全国土の会 代表取締役
農学博士 後藤 逸男