年度末から年度初めにかけて、世界中が新型コロナウイルスの脅威にさらされています。一刻も早い収束を願うばかりです。
さて、平成元年10月に農家のための土と肥料の研究会として発足した「全国土の会」ですが、お陰様で32年目を迎えました。2020年4月現在、「全国土の会」の支部組織としての「地域土の会」が22地域で結成されています。この4月には、「ふくしま土の会」が立ち上がる予定でしたが、新型コロナウイルス拡大の影響で、延期となっています。「地域土の会」では、それぞれの規約の下に、会員・会計管理、定期的な総会や研修会の開催など「全国土の会」に準じた活動をお願いしています。「地域土の会」会員以外で直接「全国土の会」に登録頂いた個人および法人会員数は2019年度で約200名、また「全国土の会」の活動をサポート頂く賛助会員が32社となっています。会員各位の「全国土の会」活動に対するご協力に、深く感謝申し上げます。
「全国土の会」では、毎年秋に全国大会を開催し、昨年度には11月に「第31回全国土の会栃木大会」として、宇都宮市と鹿沼市で開催しました。本年度の全国大会は11月前後に東京農業大学横井講堂での開催を予定していますが、今後の新型コロナウイルスの状況に応じて決定したいと考えています。
「全国土の会」の活動の基本は、土壌診断に基づいた健康な土づくりの実践です。「健康な土」とは、土壌物理性・化学性・生物性が整った三位一体の土ですが、そのためのツールが土壌診断です。圃場に深さ40~50㎝のこぢんまりとした穴を掘り、作土の厚さ・土性・団粒構造の有無・密度(硬さ)・水分状態など土を見たり、触ったりすれば、土壌物理性の善し悪しを判断することができます。しかし、土壌化学性は土を触っても、舐めてもわかりません。そのために土壌の化学分析が必要です。土壌生物性は、原則として物理性と化学性を整え、土壌動物や微生物が快く住める環境を作る。さらには、土壌動物や微生物の餌となる堆肥・有機質肥料・緑肥などの有機物を補給することで整えることができます。ただし、作物栽培を長く続けると連作障害としてセンチュウや土壌病害に悩まされることも少なくありません。そこで、最近では土壌生物性分析としてセンチュウや病原菌密度の測定が求められるようになりました。そこで、「全国土の会」では「東京農大発(株)全国土の会」で実施してきた土壌化学性の分析の他に、賛助会員である(株)つくば分析センターとタイアップして、センチュウとアブラナ科野菜根こぶ病休眠胞子密度の測定を昨年度から開始しました。
「東京農大発(株)全国土の会」の土壌診断室で実施している土壌化学性の分析(土壌診断分析)につきましては、この5年間の年間分析点数は約1,500点で推移しています。その分析法は「東京農大式土壌診断システム」で正確さと迅速性に優れる分析手法です。各成分の測定には、ICP発光分光分析装置とディスクリート式自動化学分析装置を用いていますが、土壌からの養分抽出法は、抽出ロボットではなく人力に頼っています。その分析担当者は1名で、試料の受付から分析・結果の発信・発送までの全てを担当しています。そのため、現状の分析数が上限で、「働き方改革」ができないような状況となっています。
つきましては、土壌診断分析を依頼される際、次のご協力とご了解を頂ければ幸いです。
(1)分析試料の前処理(風乾と篩別)にご協力をお願い致します。篩がない場合には、風乾だけでも結構です。
前処理方法につきましては、こちらをご覧下さい。
(2)メールアドレスを登録頂いている会員のみなさんへの分析結果の報告と分析手数料の請求書につきましては、電子メールのみとさせて頂きます。
(3)「全国土の会」のホームページに今年度の土壌診断分析予定表を掲載しています。そこには、分析結果の報告日が設定されていますが、分析依頼数が多い場合などには、若干遅れる場合があります。あらかじめご了承ください。
それでは、本年度もよろしくお願い致します。
2020年4月1日
全国土の会 会長
東京農業大学 名誉教授
後藤 逸男