設立28周年目を迎えた、農家のための土と肥料の研究会です

会長挨拶

irasuto

1.「全国土の会」とは
「全国土の会」とは、農家のための土と肥料の研究会です。その目的は農業者が土壌診断結果に基づいた土壌改良・施肥管理を実践することで、貴重な肥料資源の節約や有機質資源の有効利用を図り、農業生産経費ばかりではなく環境負荷軽減を図ります。また、高品質農産物を生産し、環境及び農業経営にも、やさしい農業を実践することです。
1989年(平成元年)10月に立ち上げた「全国土の会」の事務局を、2015年3月までは私が40年間在職した東京農業大学土壌学研究室に置いていましたが、定年退職に伴いその存続が困難となりました。そこで、2015年4月1日に「全国土の会」の事務局を主な業務とする大学発ベンチャー企業「東京農大発株式会社全国土の会」を学校法人東京農業大学の支援の下に世田谷キャンパス内に起業しました。
このように、「全国土の会」と「東京農大発(株)全国土の会」とは別組織です。ただし、「全国土の会」会長が私の表の顔、「東京農大発(株)全国土の会」代表取締役が裏の顔で、とどのつまりは表裏一体です。

2.「全国土の会」の組織
「全国土の会」とは、上記のように「東京農大発(株)全国土の会」に事務局を置く「農家のための土と肥料の研究会」ですが、その他に「全国土の会」の支部組織が結成されています。2019年11月現在、全国各地に20の支部があります。これらの支部を2018年11月から「地域土の会」と呼ぶことになりました。ただし、例えば「ふらの土の会」のようにそれぞれの名称に変更はありません。その他、「全国土の会」と「地域土の会」の関係は従来通りです。「全国土の会」概念図
「全国土の会」への入会を希望される方は、「全国土の会」あるいは「地域土の会」のいずれかに入会して下さい。どちらに入会するかはご自由にお選び下さい。「地域土の会」に入会した方は同時に「全国土の会」の会員資格を有します。また、「全国土の会」に入会した方は、「地域土の会」の研修会などに参加することもできます。
「全国土の会」への入会については、「全国土の会」のホームページ「入会案内」をご覧下さい。また、「地域土の会」への入会は、それぞれの事務局にお問い合わせ下さい。

3.「全国土の会」の活動
(1)土壌診断分析の受付
会員からの依頼による土壌診断分析を受け付けます。その受付・分析業務は「東京農大発(株)全国土の会」が行います。これまでは土壌化学性分析のみの受付でしたが、2019年1月からは土壌生物性分析(2019年1月現在では、センチュウ密度測定のみ)の受け付けも開始しました。ただし、生物性分析だけの申し込みは受けません。土壌診断分析の申し込み方法などについては「土壌診断分析要領」のページをご覧下さい。
なお、全国土の会会員が全国土の会の土壌診断分析を受けることを義務づけるわけでは決してありません。むしろ、地元のJAや肥料商あるいは普及センターなどの土壌診断室での分析を受けることを勧めています。大切なことは、土壌診断分析結果を判読して、会員自らが施肥設計、すなわち処方箋を作ることです。

(2)全国大会の開催
「全国土の会」では、毎年秋に全国各地で全国大会を開催してきました。昨年11月10日には、東京農業大学世田谷キャンパス百周年記念講堂で「全国土の会30周年記念大会」を開催しました。全国から300名の皆さんに参集頂き、お陰様で盛会となりました。
次回からの全国大会ですが、30周年を契機に次のような内容の変更を計画しています。
①「年に一度の交流会」的全国大会から、技術研修を中心とする全国大会とする。
②毎年1回の大会を、「原則として東京農大横井講堂(約200名収容)」で開催する。開催日については、農業祭などと重複しやすい11月の土曜日を避ける。開催時期を11月とは限定せず、平日の午後半日とその後の情報交換会を開催内容とする。
③毎年定期的に開催している「地域土の会」主催の研修会を「全国土の会」事務局より全会員に案内して、「地域土の会」間の交流を図る。
④「地域土の会」の協力の下、現地での土壌診断調査のデモや現地研修会を数年毎に企画・案内する。
⑤全国各地の「地域土の会」間での視察会などで交流を深める。

なお、今後開催する全国大会で予定されるテーマ(キーワード)は下記のとおりです。ただし、順不同です。
転炉スラグ:鐵鋼スラグ協会などとの共催
ゼオライト:ゼオライト工業会などとの共催
バイオマス資源(家畜糞・下水汚泥・生ごみ等)を原料とする肥料
日本有機資源協会などとの共催
土壌肥沃度と土壌病害の因果関係
リアルタイム土壌・作物診断分析
「全国土の会」のJA支部や東京農大と連携協定を締結しているJAによる「土づくり研修会」:東京農大との共催
「有機農業」と「勇気農業」

(3)「地域土の会」研修会の開催
「ふらの土の会」・「茨城土の会」・「埼玉土の会」などでは毎年定期的な総会・研修会が開催されます。その他の地域土の会でも不定期の研修会が開催されます。その都度、ホームページや会員へのメールで情報提供を行います。
(4)会員に対する土壌肥料分野の技術的サポート
土壌診断分析結果の見方、土壌改良や施肥改善などの土づくりや土壌病害対策などに関する会員からの質問や相談にメールあるいは電話で対応します。費用はもちろん不要です。

4.「全国土の会」の基本姿勢
(1)土壌診断に基づいた土壌改良・施肥管理の実践、処方箋は農家自らが決める
「全国土の会」の基本姿勢の第一は、農家自らが畑や田んぼに穴を掘って土壌診断を行い、採取した土壌の診断結果に基づいて土壌改良や施肥管理を実践することです。その際の施肥設計(処方箋)は人任せにするのではなく、農家自らが決定します。人の処方箋は医者しか書けませんが、土の処方箋は農家でも書けます。
このところ、農業界では政府主導による農業改革が進められ、肥料の価格低減、銘柄の集約化などが進められようとしています。農家にとって肥料代は安いに越したことはありませんが、安ければよいというものではありません。園芸土壌では、リン酸やカリの過剰に伴う「メタボ化」の一方、水田土壌では、堆肥やケイ酸資材の施用削減による地力低下が進んでいます。このように、わが国の農地土壌の肥沃度は大きく二分化していますが、共通点は「土の不健康化」です。
これからの土づくりとは、土を健康にすることでなくてはいけません。そのためには、土壌診断に基づいた土壌改良と施肥管理が基本となります。メタボ化した園芸土壌には、窒素に比べてリン酸やカリ含有量の少ないV型あるいはL型肥料が合理的ですが、現状では横並びあるいは山型肥料が主体です。今後の銘柄集約化では、栽培品目別肥料ではなく、土壌養分に合わせた肥料銘柄への集約化を期待します。

(2)国産リサイクル肥料の利活用促進
「全国土の会」では、肥料コスト低減化の一環として、国内産バイオマス資源を原料とするリサイクル肥料の活用についても推進します。具体的には、2017年に全肥商連との連携により実施した農水省の公募事業「生産資材コスト低減技術確立支援事業」で取り組んだ堆肥版「みどりくん」と肥料版「みどりくん」です。これらの肥料は、窒素に対してリン酸とカリ含有量が少ないL型肥料ですので、リン酸が過剰化した施設園芸には最適の肥料となります。また、窒素が「じわじわ」と効く緩効性肥料ですので、水稲の食味値を高めるなど農産物の品質向上に役立ちます。なお、肥料版「みどりくん」については、近日中に東京農大より「食品残さ加工肥料」としての登録申請を行います。その他のバイオマス資源肥料として発酵汚泥肥料の利用促進も図ります。
水田では地力低下だけではなく、土壌酸性化、鉄やマンガンの流亡に伴う老朽化が目立つようになりました。そのような水田では施肥管理の前に土壌改良(アンチエイジング)が必要です。「全国土の会」では、従来のケイカルに替わる土壌改良資材として、ケイ酸だけでなく石灰・鉄・マンガン・苦土・リン酸などを補給できる転炉スラグの利用促進を図ります。転炉スラグは全国の製鉄所で年間約1,400万トン生産されていますが、肥料としての利用量は生産量のわずか0.7%にすぎません。

(3)「全国土の会」は有機農業を勧める研究会ではありません
「全国土の会」の活動目的の一つが環境にやさしい農業の推進です。環境にやさしい農業といえば、有機農業あるいは無化学肥料・無農薬栽培と思いがちですが、「全国土の会」は有機農業を勧める研究会ではありません。
堆肥や有機質肥料など有機物のみを使って近代農業並の収量を上げようとすれば、必ず土に負荷が掛かります。堆肥や有機質肥料には、肥料の三要素である窒素・リン酸・カリが含まれています。特に、有機農業で多用される家畜ふん堆肥には窒素に比べてリン酸とカリが多量含まれています。一方、農産物の三要素吸収量が窒素とカリの10~30㎏/10aに比べてリン酸は5~10㎏/10a程度にすぎません。また、土壌中で窒素は土壌から雨水などにより流出しやすいのに対して、リン酸は土壌中を移動しにくく、かつ作物吸収量が少ないため、土壌に蓄積しやすい性質があります。土壌中でのカリは、窒素とリン酸の中間的挙動を示します。そのため、家畜ふん堆肥や三要素含有量が同等の有機質肥料を連用する農業を長年続けると、土壌中にリン酸やカリが蓄積して「メタボ土壌」となってしまいます。全国の園芸土壌にはそのような土壌が多く見受けられます。
土壌中にリン酸が蓄積すると、土の体力「土力」が低下し、アブラナ科野菜根こぶ病・各種フザリウム病害・ウリ科ホモプシス根腐病・ネギ黒腐菌核病などの土壌病害の発病を助長することが明らかになっています。また、家畜ふん堆肥ばかりでなく剪定枝堆肥などの堆肥を多量に連用し続けると、土壌中に地力窒素が増加して、その無機化に伴い生成した硝酸態窒素が下層に溶脱して地下水の硝酸性窒素汚染をもたらすことも知られています。
「環境にやさしい農業」では、土壌診断に基づいた施肥設計で、有機質と化学肥料を上手に組み合わせます。例えば、家畜ふん堆肥を従来のような土づくり資材としてではなく、リン酸あるいはカリ肥料として使います。ただし、それだけでは窒素が不足しますので、それを補う分だけ化学肥料を施用します。具体的には、尿素や硫安のような窒素単肥です。そのような施肥設計により、土が健康になるばかりでなく、肥料代も格安となります。

「全国土の会」会員の皆様方には、今後とも本会活動への積極的な参加と、事務局である「東京農大発(株)全国土の会」にご支援・ご協力を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。これまでは、農家あるいは農業に関連する皆様が中心の研究会でしたが、今後は家庭園芸やガーデニングに興味ある方など「土」に係わる全ての皆様にも参加頂き、活動の輪を拡げていく所存です。よろしく、ご協力をお願い致します。

 

2019年 1月

全国土の会  会長
東京農業大学 名誉教授
東京農大発(株)全国土の会 代表取締役
農学博士  後藤 逸男

 

事務局の所在地
〒156-8502 東京都世田谷区桜丘1-1-1
事務局の名称
東京農大発(株)全国土の会
電話・FAX
03-3426-1771  携帯電話:090-5551-6663
E-mail
soil@nodai.ac.jp 
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